「させていただきます」は使わない方が良い?絶対に使ってはいけない状況とは



「ご連絡させていただきます」や「ご案内させていただきます」のように、
こちらから相手に向けて何かをする際に「させていただきます」を用いる人は多いと思います。

一方で「させていただきますはあまり使わない方が良い、という話を聞いたことがある方や、
丁寧に話そうとすると「させていただきますばかりになってしまい、気になっている方もいるのではないでしょうか。

現代は「させていただく」が大流行中の社会

街並みの写真

「させていただきます」や「させていただきました」など、「させていただく」は毎日のように見聞きする敬語ですよね。

あまりにも使われているので、丸々一冊「させていただく」について書かれた本まであります。

「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ(角川新書)椎名美智
https://www.amazon.co.jp/dp/B09NVC6RW6

実際に、「させていただく」は手軽に敬意を示せる言い回しとして普及していますし、
「来る→おいでになる」のような、変則的な変化がほとんどないので覚えやすいという特長があります。

「させていただく」を使いすぎると…

「させていただく」の敬意を高めようとするあまり長い言い回しになってしまう人がいます

「させていただく」は使いやすい便利な敬語である反面、多用すると、いざと言う時の敬意の表し方に困るという弊害もあります。
例えば、「させていただく」よりも丁寧な言い方をしたいと思った時に、他の言い方が思いつかず、困った経験はないでしょうか。
これは敬語の語彙を増やすだけでは解決が難しい問題です。

というのも、「させていただく」自体は敬意の低い敬語ではありませんが、多用により敬意が薄れてしまい、それ以上に丁寧な言い回しをしようとすると、違和感のある大げさな言い方しかできなくなっているためです。
「させていただく」よりも敬意の高い敬語は少ないです。

させていただけますか」の敬意を高めようとして、「思います」の謙譲語である「存じます」と合わせた「させていただきたく存じます」という言い方をしている人や、
してもよろしいでしょうか」と合体させた「させていただいてもよろしいでしょうか」という長い言い方をしている人もいますよね。

「させていただく」に限った話ではありませんが、過剰な敬語を多用すると、更に敬意の高い言い方を模索する必要があり、結果として長大な言い回しになっていきます。

「過剰敬語」を使いすぎると敬意が薄れてしまい、薄まった敬意の分だけ大げさな言い方になっていきます

「させていただく」は人によって感じ方が異なる敬語

「させていただく」を「相手に関係することを行う時」に用いている人が多いです

人によって「させていただく」を異なる意味に捉えているという問題もあります。
個人的に見聞きした範囲では、多くの人が「させていただく」を「相手に関係することを行う時に言う敬語」だと考えているように感じます。

例えば、「ご案内させていただきます」は「相手を案内する」という行為をする前に言いますし、駅の張り紙で見かける「○○線は終日運休とさせていただきます」は、その線の電車を乗る予定だった人に対して「させていただきます」を用いています。

しかし、現在のように頻繁に使われる前の「させていただく」は、もっと限られた状況でのみ用いる敬語でした。
なので同じ「させていただく」でも、年齢や地域、敬語の理解度などによって解釈が異なり、相手によっては「失礼な言い方」だと思われてしまう危険性があります。

今回は、文化庁が定義している「させていただく」の使い方を基に、適切な状況で用いる方法を解説していきます。

「させていただく」を使うための条件

「させていただく」は「相手からの許可」と「行為による恩恵」を満たしていると適切な用法です

「させていただく」は、文化庁が用いるための条件を具体的に挙げています1

基本的には,自分側が行うことを,ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。

このうち、の両方を満たしていれば「適切」、片方にしか当てはまらない場合は「余り適切だとは言えない」、両方とも満たしていない場合は「不適切」だと書いています2

様々な状況に対応するために分かりづらい条件になっていますが、大抵の状況において

  • ア)相手の許可を得ている行為である
  • イ)その行為によって自分が得をする

場合に使用する、と言い換えられます。
ここでの行為とは「◯◯させていただきます」の「◯◯」のことを指します。
「いただく」は「もらう」の謙譲語ですから、一言で表すと「許可をもらった上で、自分の利益のために行う時に用いる謙譲語」です。

次は、文化庁の定義を満たした「させていただく」をTwitterのフォローやリツイートで考えてみます。

Twitterで理解する「させていただく」の使い方

Twitterのアイコンの多い鳥

Twitterで「フォローさせていただきます」や「フォローさせていただきました」とメッセージを送る人は多いですよね。

まず、相手のツイートをタイムライン上で読める、縁が深まるという点で「自分が得をする」という条件は満たしています。

次に「相手の許可を得ている」ですが、フォローは相手の許可が必要ですので「させていただきます」の使用は問題ありません。
フォロー自体は勝手に行えますが、駄目な時はブロックされるためです。
なので、許可を得てフォローをする前にフォローさせていただきます」を用います。

Twitterでの「フォローさせていただきます」は条件を満たしています

過去形の「フォローさせていただきましたは許可を得てフォローをした後に用います。
鍵付きアカウントの場合はフォロー自体に申請が必要なので、フォローができたということは許可を得られたということになります。
なので「フォローさせていただきました」は問題ありません。
許可を得たい時は「フォローさせていただけますか」を用います。

フォローを解除する」場合はどうでしょうか。

Twitterでの「フォローを解除させていただく」は条件を満たしていません

当然、「フォローの解除」は許可が必要な行為ではないので、「させていただく」は使えません3
突然のフォロー解除に驚かれないように伝えている可能性もありますが、言う必要の無いことをわざわざ伝えていますから、ほとんどの人は嫌みに感じると思います。
また、「フォローを解除しても良いですか?」や「フォローを解除しました」だけでも嫌みっぽいですが、
「させていただく」の「自分が得をする」という点が加わるせいか、更に嫌みっぽく感じます。

では、「リツイートをする」場合はどうでしょうか。

Twitterでの「リツイートさせていただきます」は条件を満たしていません

リツイートは相手が削除できず、拒否のしようがない行為です4
リツイートさせていただけますか」と聞いたとしても、実際はリツイートをする予定であることを「報告」しているだけです。
許可と拒否は表裏一体ですから、「リツイート」は「フォローを解除する」時と同じく許可が不要です5
「リツイート」という行為を丁寧に報告しようという気持ちは伝わるので、失礼だと感じる人は少ないでしょうが、
「リツイートさせていただく」は、文化庁の定義では「余り適切だとは言えない」使い方です。

ちなみに許可を得ずにフォローしたことを伝えたい場合は

  • フォローいたしました
  • フォローを致しました
  • フォロー失礼いたします

などといった書き方があります。こちらはどんな状況でも使えます。
フォローに限らず「リツイートいたしました」等も、もちろん正しい敬語です。

「謝罪させていただきます」は避けよう

「謝罪させていただきます」は自分の利益のために謝っているのだと解釈されかねません

自分が得をする」という条件が理由で「させていただきます」を絶対に使ってはいけない状況は「相手に謝罪をする時」です。

謝罪をする際、「この場を借りて」や「あらためて」などの言葉に続ける形で「謝罪させていただきます」を用いている文章をたまに見かけます。

この時の「謝罪させていただきます」は、謝罪により「自分が得をする」という点から、
自分が得をする為に謝罪をします」という意味に捉えられてしまう恐れがあります。

ここでの「得」とは「許されること」ですから、「今から謝るので許してください」と言っているようなものです。
そもそも、「謝罪させていただきます」自体は謝罪ではなく、謝罪をする前の前置きですから、言う必要がありません。
「お詫びさせていただきます」や「謝らせていただきます」も同様です。

お詫び申し上げます」や「謝罪いたします」、「申し訳ございません」などを用いましょう。

「訪問させていただきます」と「訪問いたします」の使い分け

往訪時の使用は基本的に問題ありません

今度は反対に「自分が得をする」により、相手に感謝の気持ちを伝えられる「させていただく」をご説明します。

会社訪問やOB訪問など、「訪問させていただきます」は社会人から就活生まで用いる機会が多い敬語ですよね。

まず「相手の許可を得ている」は、訪問をするためには相手の許可が必要ですから、許可を得た後であれば「させていただきます」の使用は問題ありません。

次に「自分が得をする」ですが、これは自分の捉え方と伝えたい気持ち次第です。

訪問をすることに利点を感じていて、「特別に私と会う時間を作っていただける」という感謝や恐悦の気持ちを伝えたければ「訪問させていただきます」で良いでしょうし、
定例的な訪問であれば「訪問いたします」、「伺います」、「参ります」などの方が良いです。
ちなみに、「伺う」や「参る」はそれだけで謙譲語ですので「いたします」はつけません。
例外として「お伺いします」も二重敬語ですが、習慣として定着しているので問題ありません6

何度も「訪問させていただきます」を用いると敬意が薄れ、軽々しい表現だと思われてしまいますが、使い分けをすることで防ぐことができます。
特別な時にだけ「させていただく」を使えば、訪問したことが良い結果につながった際に「先日訪問させていただいたおかげで」のような形で話を始めることが出来、さりげなく感謝の気持ちを伝えられます。

なぜ「相手の許可を得ている」必要があるの?

現在よく用いられている「させていただく」には「自分が得をする」という考えはありますが、「相手の許可を得ている」に関してはあまり残っていないので、まだしっくり来ない方も多いと思います。
これは「相手に敬意を示す」という、謙譲語のそもそもの役割を考えると分かりやすいです。

例として「会議で必要なので、上司が作った資料を印刷したい」という状況で考えてみます。

この時、上司に許可をもらった後に印刷をして、
会議の後で「資料を印刷させていただいたおかげで上手くいきました」と報告をした場合、
この時の「させていただいた」の敬意は「印刷をする許可をくれたこと」に向かっています。

許可を得た上で用いる「させていただく」には、許可をしたという行為に対する敬意があります

次に、「会議まで時間がなかったので、勝手に上司の資料を印刷して事後報告した」という状況で考えてみます。

この時に「会議まで時間がなかったので、勝手にですが資料を印刷させていただきました」と言うのは、よく聞く「させていただく」の使い方ですよね。
ですが、この「させていただく」には一つ問題があります。

この時の敬意は何に対してなのでしょうか。

許可を得ずに勝手にした行為の後の「させていただく」は、敬意の対象がはっきりしません

上司からすると勝手に印刷をされて、一方的に敬意を抱かれている状態です。

間違いなく許可をくれるのであれば、上司に対する敬意を先に表明しているのかもしれません。
それによって敬意を感じる人もいれば、場合によっては「勝手に印刷しましたけど、良いですよね?」と許可を催促されているように感じる人もいます。
他にも色々な解釈ができると思いますが、どう受け止められるかは相手次第ということは確かです。

このような状況では、相手に敬意を示さずに恐縮する気持ちを表せる丁重語の「いたしました」が適切なのですが、不必要に相手に敬意を示す「させていただきました」を用いていることで、余計な解釈をする余地を生んでしまっています。

このように、相手の許可を得ている状況であれば別の意味に勘違いされることはまず無いのですが、許可がないと勘違いされる危険性があるため、文化庁の定義では「相手の許可を得ている」を重視しています。

まとめ

「させていただく」は、文化庁によって具体的に使い方が定義されているものの、実際は多くの人が異なる解釈で使用しているため、相手によっては自分の意図とは違う意味に捉えられてしまう危険性のある難しい敬語です。
特に謝罪をする時に用いると失礼にあたるのでご注意ください。

以下は、「させていただく」を使いすぎている発言を言い換える場合の一例です。

まず、ご説明させていただく前に、お話しさせていただきたいことがございます。先日弊社の山田が訪問させていただいた際には〇〇だとお話しさせていただきましたが、正しくは××でした。この場をお借りして謝罪させていただきます。

まず、ご説明する前に、申し上げたいことがございます。先日弊社の山田がお伺いした際には〇〇だとお話しいたしましたが、正しくは××でした。この場を借りてお詫び申し上げます。

敬意を低めにしても良いところは謙譲語の「お〜する」と「ご〜する」を用い、もう少し高めたいところは「いたします」に、最も敬意を高めたいところは「申し上げます」を用いています。
「させていただく」以外の表現も用いて敬意に緩急を付けると、謝罪などの重要な言葉における敬意を深められるだけではなく、要点が短くまとまり聞き取りやすくなります。

おまけ:さ入れ言葉にご注意

  • 飲まさせていただきます
  • 行かさせていただきます
  • 置かさせていただきます

上記のように「~させていただく」と「~せていただく」のどちらが正しいか悩む時があります。

これは「〜せない」と否定形にしてみると簡単に分かります。
今回の場合、「飲ませない」「行かせない」「置かせない」と書けます。
つまり上記は全て誤りで、「飲ませていただきます」「行かせていただきます」「置かせていただきます」が正しいです。

逆に「食べせない」「やめせない」とは書けませんから、「食べさせていただきます」「やめさせていただきます」になります。

ただし「降ろす」は「降ろせない」とも書けますが、これは否定ではなく「出来ない」という意味ですのでご注意ください。

ちなみに「見せない」「着せない」のように「漢字一文字+せない」の中には「~させていただく」と「~せていただく」のどちらも正しい場合があるのですが、
種類は少なく、日常的に使う言葉はこれくらいしかないので気にする必要はないと思います。

おまけ:「させて頂く」は正しい?

「させていただく」以外にも「させて頂く」または「させて戴く」と書いている人がいますが、全て正しい書き方です。
念のため3つの辞書で調べてみましたが、全ての辞書に「もらう謙譲語と記載されていました7

実際に見るわけではないのに「して見る」と書いたり、行くわけではないのに「して行く」と書くのは分かりにくいということで、新聞やニュースを始めとした多くの媒体では「動詞・形容詞などの補助的な用法はひらがなで書くという規則8に従っています。
この規則の下では「させていただく」と書くということが、「させて頂く」と「させて戴く」をあまり見ることがない理由となっています。

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出典と注釈


  1. 敬語の指針 p40 ↩︎

  2. 敬語の指針における【解説1】だけではなく、【解説2】の内容も勘案しています。
    なお、【解説2】の4番目の例には「結婚式が新郎や新婦を最大限に立てるべき場面であることを考え合わせれば許容されるという考え方もあり得る」と書いてありますが、これは「不適切」なものの、状況によっては許容する人もいるという意味であり、【解説1】の定義としては「不適切」なままだと解釈しています。
    反対に、5番目の例にある「「私は,卒業するのが困難だったところ,先生方の格別な御配慮によって何とか卒業させていただきました。ありがとうございました。」などという文脈であれば, 必ずしも不適切だとは言えなくなる」は、文脈によっては「不適切」ではない場合があると解釈しています。 ↩︎

  3. 「自分が得をする」は、実際には「恩恵を受けるという事実や気持ち」ですから、相手からもたらされる「得」である必要があります。今回の場合相手は何もしていませんし(強いて言えばアカウントを作った)、得るものもツイートがタイムラインに流れないことぐらいですから、「相手の許可を得ている」だけではなく「自分が得をする」もほとんど満たしていません。 ↩︎

  4. ツイートやアカウントを削除することで消せる場合もありますが、他の人がしたリツイートも消えるので除外しています。 ↩︎

  5. 「自分が得をする」に関しては、相手の許可によるものではないものの、相手の投稿を自分のタイムラインに流せるという結果を「恩恵」と見立てていると解釈することが可能ですから、フォローを解除する時と比べると「させていただく」を使う条件を満たしています。 ↩︎

  6. 敬語の指針 p30 ↩︎

  7. 広辞苑 第七版 、デジタル大辞泉 ver.3.2.0 、スーパー大辞林 3.0 【頂く・戴く】の項 ↩︎

  8. 公用文作成の考え方(建議) 文化庁, p11 ↩︎