「了解しました」より「承知しました」の方が丁寧?謎のマナーについて
近年流行り出したマナーとして
- 「了解しました」は失礼
- 目上の人には「承知しました」
というものがあります。
こちらに関しては
どちらも目上の人や取引先の人に対しては、あまり適切な言い方ではありません。
謙譲語にした
- かしこまりました
- 承りました(うけたまわりました)
- 了解いたしました
- 承知いたしました
を用いることをお勧めします。
突然広まった謎のマナー
「了解しました」は失礼なので「承知しました」と言うべきという謎のマナーは、2011年〜2013年頃に急に広まったという調査結果があります(後述)。
私も初めて聞いたのはこの頃で、当時は「承知しました」と言うように気をつけていました。
「了解」と「承知」は敬語表現ではない
「了解しました」や「承知しました」における「了解」と「承知」は、尊敬語でも謙譲語でもない単なる名詞です1。
そこに丁寧語の「しました」が付け加えられています。
なので「分かりました」と同じくらいの敬語表現です。
敬意の度合いは高くなく、簡単な依頼を受けた際や、上下関係があまりない間柄で用いる敬語です。
「了解」と「承知」の意味は定まっていない
「了解」と「承知」の意味は、辞書によって説明がまちまちであり、はっきりと違いが定まっていません。
調べた限りでは、どちらも「理解」や「承諾」と同じような意味があると書いている辞書が多いです。
ただし、「了解」よりも「承知」の方が丁寧だと書いている辞書は見つかりませんでした。
特に、広辞苑で「了解」と調べると「事情を汲んで承知すること」と出ますし2、デジタル大辞泉に至っては「承知すること」と出るので3、大した違いがない可能性もあります。
なぜ「承知しました」の方が丁寧だと言われるようになったの?
作家の菊池良氏が詳しく経緯を調査しまとめた記事があり、それによると2009年に登場した考えだそうです。
「了解しました」より「承知しました」が適切とされる理由と、その普及過程について
https://liginc.co.jp/246919
そして2011年にWebメディアで取り上げられるようになり、急速に広まったのではと推測なさっています。
勘違い敬語が何故生まれるのかが分かる面白い記事ですので、気になる方はご一読をお勧めします。
誤った敬語が普及し、一般的に容認される事例は過去に何度もありました。
「了解しました」より「承知しました」の方が丁寧というマナーもいつかは一般化するかもしれません。個人的には面倒なので廃れて欲しいです。
とはいえ、「嘘マナー」でWeb検索をすると「嘘マナーの一例」として紹介している記事も見つかるようになりましたから4、一般化するほど浸透はしなさそうです。
PR:記事を手軽に読めるアプリがあります
敬語.jpの姉妹アプリ「敬語翻訳」なら、敬語.jpの記事を高画質で手軽に読めます。
敬語の文章の確認・修正が出来る機能もあります。
ダウンロードはこちらから
出典
広辞苑 第七版、デジタル大辞泉 ver.3.2.0、スーパー大辞林 3.0 【了解】【承知】の項
広辞苑には「旨をうけたまわって知ること。」という謙譲語であるともとれる説明がありますが、「承知しました」における「承知」は「聞き入れること。承諾。」の方です。
そもそも用例が江戸時代のものしかなく、他の辞書には同様の説明が載っていないため、「旨をうけたまわって知ること。」は古語、あるいは誤りの可能性が高いです。 ↩︎広辞苑 第七版 【了解】【諒解】の項 ↩︎
デジタル大辞泉 ver.3.2.0 【了解】【了承】の項 ↩︎
嘘マナーとは(ニコニコ大百科) 記事内において、「過去に話題となった嘘マナー」の一例として紹介
2022年3月5日時点で、Googleで「嘘マナー」と検索した際に一番目に出る記事です。 ↩︎